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塩干品の品質安定化技術の開発(第2 報) 2013年度(平成25年度) | 資料集 | 大分県産業科学技術センター

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(1)

塩干品の品質安定化技術の開発(第2報)

堀 元司・廣瀬 正純

食品産業担当

Development of the quality stabilization technology

of the dried fish(the 2nd report)

Motoshi HORI・Masazumi HIROSE

Food Industry Group

要 旨

アジ一夜干しの保存期間中に発生する臭いについて,クエン酸などを豊富に含むカボス果汁等を活用することに よる抑制方法を検討するとともに,塩干品の商品性向上のための無臭干物製造方法の検討を行った.

1 乳酸等の有機酸及びカボス果汁,ゴボウ汁,ショウガ汁,パセリ汁,紅茶,ヨーグルト,ブルーベリー果汁,小ネ ギ汁,にら汁,トマト汁,甘夏果汁,玉葱汁,大根汁において塩干品臭を構成する主要な臭いであるトリメチル アミン(TMA)臭等に対する消臭能力を有することを確認した.

2 乳酸等有機酸及びカボス果汁,大根汁においては,アジ一夜干しの保存期間中に発生する塩干品臭の抑制能力 を有することを確認した.

3 乳酸,カボス果汁,大根汁を用いて試作した塩干品中の臭い原因成分について保存期間中の推移を確認したと ころ,TMA量の増加が抑制されていたことが確認できた.

1. はじめに

塩干品(干物)は魚体からの食塩による脱水に加えさら に乾燥することで細菌の増殖を防ぎ長期間の貯蔵を可能 にしている製品であるが,近年は消費者ニーズに即した 薄塩の一夜干し製品が主流となっている.

塩干品は県内水産加工業の主力製品となっているが, 塩干魚介の1人当たり年間支出額(実質)は近年減少し続 けており,水産加工業者からも干物が売れないといった 相談が寄せられている.

この要因の一つとして,本能的に食べづらい形態を嫌 ったり,酸っぱいものや生臭いものを避ける傾向にある といわれる子供の”魚離れ”があると考えられている. 生ぐささ(魚臭さ)は加工及び流通過程で生成される TMA,アルデヒド類,脂質の酸敗臭などにより発生し ているが,その抑制方法としては塩基性の臭い成分を酸 と反応させて不揮発性にする等の方法が知られている. そこで,前年度に引き続きビタミンCやクエン酸など の有機酸を豊富に含む柑橘類の果汁などの食品が塩干品 臭の抑制能力を有するかどうか調査を行い,塩干品の商 品力向上を目的に食品を活用した無臭干物などの開発を 行った.

2. 調査方法 2.1 塩干品の品質安定化方法の検討

2.1.1 臭い原因成分に対する食品等の消臭能力

塩干品臭の主要な原因成分であるTMA,アンモニア (NH3)の臭いに対して,果汁や野菜汁等が消臭能力を

有するか確認を行った.

試験方法としては,TMA,アンモニア溶液を入れた 遠沈管に果汁等を添加し,官能検査にて臭いを判定する ことにより消臭能力の有無を確認した.

○臭い原因成分溶液

0.1N TMA溶液、0.1N NH3溶液

○調査食品等

カボス果汁,りんご皮の汁,ゴボウ汁ショウガ汁, リンゴ酸,くえん酸,乳酸Ca,塩化Mg他 ○効果判定(官能検査にて実施)

評点:0(無臭)~2(やや臭う)~4(非常に臭い)

2.1.2 塩干品臭抑制能力の確認

(2)

試験方法としては,食品等を添加した塩水(浸漬液)に て立て塩(魚肉に塩味を付与するために塩水に漬け込む 工程)を行ってアジ塩干品(一夜干し)を試作し,10℃ にて5~7日間の保存期間中に発生する臭いを官能検査 及び臭いセンサ-(臭い値)にて調査を行った.

○ アジ塩干品試作方法

・製造工程 原料魚 → 塩漬け → 水洗い → 乾燥 ・塩漬条件 塩分濃度3%に調製した原料魚重量の倍

量の浸漬液に20時間浸漬した. ・乾燥条件 20℃に設定した冷風乾燥機にて乾燥後重

量が原料魚重量の84%以下となるまで 乾燥した.

○ 調査食品等

カボス果汁,ゴボウ汁,ショウガ汁,パセリ汁, 紅茶,ヨーグルト,ブルーベリー果汁,小ネギ汁, にら汁,トマト汁,甘夏果汁,玉葱汁,大根汁, 酒石酸,乳酸,リンゴ酸,コハク酸,りん酸, くえん酸

○ 調査項目

官能検査(臭い),臭い値(臭いセンサー測定値)

2.1.3 塩干品中の臭い原因成分の推移

2.1.2の調査にて塩干品臭抑制能力を有することが確 認できた食品等を用いて試作した塩干品において,臭い 原因成分の保存期間中における推移を確認した.

試験方法としては,2.1.2の試作方法と同様の方法に て試作したアジ塩干品を10℃にて7日間保存し,TM A等の推移を確認した.

Table 1 塩干品中の臭い原因成分の推移調査 原 料 魚 アジ(3枚おろしにして中骨を除き用いた) 試 験 区 対照区,乳酸0.4%区,カボス果汁10%区,

大根汁15%区

保存温度 解凍後10℃にて保存 調 査 日 解凍後0日,7日

調査項目 官能検査(臭い),pH,臭い値(臭いセン サ-による分析値),VBN,TMA, TBARS値,水分,塩分

3. 調査結果及び考察 3.1 塩干品の品質安定化方法の検討

3.1.1 臭い原因成分に対する食品等の消臭能力

TMA臭,NH3臭を評点にて1(感じる程度)以内に

まで消臭した場合に消臭能力があるものとした.

乳酸等の有機酸はTMA臭等を消臭する能力を有して いたが,乳酸Ca等の塩に消臭能力は認められなかった.

食品等の試験においてはNH3溶液よりも強い臭いを

呈するTMA溶液に対する消臭効果を確認したが,カボ ス果汁,ゴボウ汁,ショウガ汁,パセリ汁,紅茶,ヨー グルト,ブルーベリー果汁,小ネギ汁,にら汁,トマト汁, 甘夏果汁,玉葱汁,大根汁において消臭能力を確認した.

Table 2 有機酸等の消臭程度確認表 0.1N TMA 0.1N NH3

1ml 4ml 1ml 備考

乳 酸 0.5 0.5 0 ○

リンゴ酸 0.25 0.25 0 ○ クエン酸 0.5 0.5 0 ○

酢 酸 0 0.5 0 ○

酒石酸 0.5 0.5 0 ○

コハク酸 0 0.5 0 ○

りん酸 0 0.5 0 ○

注:有機酸等の添加量は0.1N溶液 2ml

評点:0(無臭)~1(感じる程度)~2(やや臭う) ~3(臭う)~4(非常に臭い)

○;効果有,△;効果やや有,×;効果無し

Table 3 塩等の消臭程度確認表 0.1N TMA 0.1N NH3

1ml 1ml 備考

乳酸Ca 2 2 ×

塩化Mg 2.5 3 ×

硫酸Ca 3 1.5 ×

クエン酸Na 2.5 1 ×

炭酸Ca 4 1.5 ×

塩化Ca 2.5 1.5 ×

アルギン酸Na 2 2 ×

注:塩等の添加量は0.1N溶液 2ml

(3)

Table 4 食品等の消臭程度確認表

0.1N TMA 0.1N TMA

0.5ml 2.5ml 10ml 備考 0.5ml 2.5ml 10ml 備考

カボス果汁 0 0 0.5 ○ 小ネギ汁 0.5 0.5 0.5 ○

リンゴ皮汁 0.5 0.5 3 × にら汁 0 0 0.25 ○

ゴボウ汁 0 0.5 0.25 ○ 人参汁 1.5 - - ×

ショウガ汁 0 0 0.25 ○ トマト汁 0 0 0.25 ○

パセリ汁 0.5 0 0.25 ○ 甘夏果汁 0 0 0 ○

春菊汁 0 0.25 2 × ピーマン汁 0 0.5 2 ×

ウーロン茶 2 - - × 玉葱汁 0 0.25 0.5 ○

紅 茶 0 0.25 0.25 ○ 椎茸汁 0 0 1 ×

牛 乳 2 - - × 大根汁 0 0.5 0.5 ○

ヨーグルト 0 0 0.25 ○ エタノール 2 - - ×

ブルーベリー果汁 0 0 0.5 ○ ソルビトール 2.5 - - × 注:果汁等の添加量は1ml又は1g

3.1.2 塩干品臭の抑制能力の確認

3.1.1でTMA臭等の消臭能力を有することを確認し た食品等を用いてアジ塩干品の試作を行い,保存前後の の塩干品臭について調査を行った.

試験は5回に分けて行ったが,乳酸等有機酸において は塩干品臭を抑制することが確認できた.

食品等においては,試験結果にばらつきが見られたも

のの,小ネギ汁,ニラ汁,カボス果汁,ゴボウ汁,パセ リ汁,大根汁に抑制効果が認められた.

しかし,ゴボウ汁,パセリ汁,小ネギ汁,ニラ汁につ いては,その食品自体の強い臭いにより塩干品臭をマス キングしたものであったことから,今回の試験目的に沿 った食品としてはカボス果汁,大根汁が有望だと考えら れた.

Table 5 塩干品臭の抑制効果判定表

1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 総合評価 備 考

カボス果汁 × △ × △ △ △

ゴボウ汁 × × ○ ○ △ △ マスキングによる抑制

ショウガ汁 × × - - × ×

パセリ汁 △ △ × ○ × △ マスキングによる抑制

紅 茶 △ × - - × ×

ヨーグルト × × - - - ×

ブルーベリー果汁 × × - - - ×

小ネギ汁 × ○ ○ - ○ ○ マスキングによる抑制

ニ ラ 汁 × ○ △ ○ ○ ○ マスキングによる抑制

トマト汁 × × - - △ ×

甘夏果汁 × × - - - ×

玉 葱 汁 × × - - - ×

大 根 汁 - △ × × ○ △

乳 酸 ○ ○ △ △ - ○

リンゴ酸 △ ○ - - - ○

クエン酸 △ △ - - - ○

酒 石 酸 ○ - - - - ○

コハク酸 ○ - - - - ○

リ ン 酸 △ - - - - ○

(4)

Table 6 塩干品臭に対する食品等の消臭程度確認表 臭い(官能検査評点) 臭い値

試 験 区 加熱前 (臭いセンサー測定値) 備 考

(5)

3.1.3 塩干品中の臭い原因成分の推移

3.1.2の試験にて塩干品臭の抑制能力を有することが 確認できた乳酸,カボス果汁,大根汁を用いて試作した 塩干品を10℃で7日間保存し,その保存時における臭い 原因成分等の推移を調査した.

試作したアジ塩干品の水分含量等はTable 7のとおり であった.

臭い原因成分であるTMAについては対照区に比べ試 験区の増加量が抑制される傾向が示されたが,VBN, TBARS値には大きな差違は認められなかった.

塩干品臭は試験区各区とも抑制される傾向を示したこ とから,今回の試験においては臭い原因成分のうちTM Aの増加を抑制することで,塩干品臭の抑制が図られた

Table 7 アジ塩干品の水分含量等 水 分 塩 分 pH 原 料 魚 72.4% - 6.24 対 照 区 68.7% 1.95% 6.14 乳 酸 0.4%区 69.4% 1.70% 5.78 カボス果汁10%区 68.5% 1.76% 5.83 大根汁 15%区 67.4% 2.05% 6.21

ものと考えられた.

カボス果汁区では塩干品臭以外にカボス臭が若干感じ られたが,乳酸,大根汁区では特に異臭は感じられなか った.

Table 8 アジ塩干品中の臭い原因成分の推移

臭 い(官能検査評点) 臭 い 値

p H 加 熱 前 加 熱 後 (臭いセンサー測定値)

0日 7日 増加値 0日 7日 増加値 0日 7日 増加値 0日 7日 増加値 対 照 区 6.14 6.15 0.02 1.5 2.5 1.0 1.0 1.5 0.5 574 865 291 乳 酸 0.4%区 5.78 5.79 0.01 1.0 1.5 0.5 0.5 1.0 0.5 353 454 101 カボス果汁10%区 5.83 5.55 -0.28 1.5 1.5 0.0 0.5 1.0 0.5 786 814 28 大根汁 15%区 6.21 6.21 0.00 1.0 2.0 1.0 0.5 1.0 0.5 675 748 73

(注) 官能検査評点:0(無臭)~2(やや臭い)~4(すごく臭い)

TMA VBN TBARS値

mg% mg% mgMDA/kg肉

0日 7日 増加値 0日 7日 増加値 0日 7日 増加値 対 照 区 0.9 12.1 11.2 8.9 10.9 2.0 11.9 11.4 -0.5 乳 酸 0.4%区 0.7 1.9 1.2 7.6 6.9 -0.7 14.5 18.1 3.6 カボス果汁10%区 0.6 1.7 1.1 8.4 5.6 -2.8 11.2 13.9 2.7 大根汁 15%区 0.7 2.1 1.4 8.5 10.1 1.6 10.7 8.2 -2.4

以上より,乳酸等の有機酸,カボス果汁,大根汁を用 いることにより,今回の試験目的である無臭とまではい かないものの,塩干品中のTMAの増加を妨げることに より塩干品臭を抑制することが可能であることが示唆さ

れた.

Table 4 食品等の消臭程度確認表 0.1N TMA 0.1N TMA 0.5ml 2.5ml 10ml 備考 0.5ml 2.5ml 10ml 備考 カボス果汁 0 0 0.5 ○ 小ネギ汁 0.5 0.5 0.5 ○ リンゴ皮汁 0.5 0.5 3 × にら汁 0 0 0.25 ○ ゴボウ汁 0 0.5 0.25 ○ 人参汁 1.5 - - × ショウガ汁 0 0 0.25 ○ トマト汁 0 0 0.25 ○ パセリ汁 0.5 0 0.25 ○ 甘夏果汁 0 0 0 ○ 春菊汁 0 0.25 2 ×
Table 6 塩干品臭に対する食品等の消臭程度確認表 臭い(官能検査評点) 臭い値 試 験 区 加熱前 (臭いセンサー測定値) 備 考 開始時 終了時 増加値 開始時 終了時 増加値 対 照 区 ① 1.5 4.0 2.5 183 >2,000 - - 1回目 対 照 区 ② 1.5 4.0 2.5 192 1,047 856 - 試験 カボス果汁10%区 0.5 3.5 3.0 572 >2,000 - × ゴボウ汁 10%区 0.0 3.0 3.0 234 >2,000 - × 保存

参照

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